妊娠後期の下痢の対処法！腹痛も。赤ちゃんへの影響は？｜医師監修

妊娠後期のつらい下痢。
ずっと続く方や、便秘と下痢を繰り返す方、吐き気などの症状を伴う方も。

妊娠中の下痢は、自然に治るものなのか、病院に行くべきなのか、石野医院の石野先生に解説してもらいました。注意すべき症状の対処法も聞いたので、参考にしてください。

監修医

石野医院

副院長
石野 博嗣 先生

経歴

1999年　日本医科大学産婦人科教室入局　日本医科大学付属病院　産婦人科研修医
2001年　国立横須賀病院（現 横須賀市立うわまち病院） 産婦人科
2002年　東京都保健医療公社　東部地域病院　婦人科
2003年　日本医科大学付属病院　女性診療科・産科 助手代理
2004年　日本医科大学付属第二病院　女性診療科・産科　助手
現在　石野医院の副院長

妊娠中は下痢になりやすい？

妊娠中の下痢のよくある原因や、基本的な対処法を聞きました。

妊娠中の下痢の原因

妊娠によるホルモンバランスの変化で、腸の動きに影響が出ていると考えられます。

妊娠中は下痢の症状がでる人や、便秘と下痢を繰り返す症状がでる人もいます。
下痢の多くは、急性のものであり、期間が短期間・軽度の場合には、妊娠に影響が出ることはほとんどありません。急性の下痢症状は、基本的に無治療で自然に快方に向かいます。下痢は、有害物質を排泄している自己防衛の現象なのです。

基本の対処法

下痢は、多くが有害物質を体外に排出している現象です。無理に止めるのではなく、消化の良い食事をとり、脱水にならないように水分摂取を行います。

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赤ちゃんへの影響は？

妊娠中に下痢になってしまうと、「お腹の赤ちゃんは大丈夫かな･･･？」と心配になってしまいますよね。

妊娠後期に下痢になった場合、お腹の赤ちゃんに影響はありますか？

急性の一時的な下痢であれば、影響が出ることは基本的にはありません。

しかし、感染症が原因の激しい下痢や長引く下痢は、母体への負荷・病気の影響が考えられるので、病院を受診しましょう。

流産・早産の心配は？

妊娠後期に下痢や腹痛があると、「もしかして切迫早産になってしまうのでは…」と不安に感じる方も多いです。

下痢が流産・早産になるおそれはありますか？

一時的な下痢であれば、問題はないと考えられます。

しかし頻度は稀ですが、カンピロバクターやリステリアに感染すると流産や死産、新生児髄膜炎の原因となります。

カンピロバクター

1. 原因：感染性・肉類や生乳から
2. 症状：腹痛、下痢、発熱、吐き気、嘔吐、頭痛など
3. 対処法：カンピロバクター食中毒の症状は、他の食中毒と似ています。食中毒によっては、自己判断で下痢止めなどを服用すると悪化する恐れがありますので注意が必要です。

胎児に感染し、髄膜炎にかかることもありますので、医療機関を受診しましょう。

リステリア

1. 原因：感染性・非加熱食材（生ハム、ナチュラルチーズ、サラミなど）から
2. 症状：嘔吐、発熱、悪寒、背中の痛みなど。初期症状は、インフルエンザに似ています。
3. 対処法：胎児に感染し、胎児敗血症になる恐れもあります。

上記の症状が見られたら、医療機関を受診しましょう。

注意する下痢と対処法

「こんな下痢は要注意！」という下痢症状と、どう対処したらいいのか解説します。

１日10回以上の下痢や、嘔吐を伴う場合

原因として考えられること

1. ウイルス性腸炎
2. 大腸菌やサルモネラ菌などによる細菌性腸炎など

対処法

下痢が1日10回以上、嘔吐を伴う、腹痛が強い場合は、細菌感染の疑いがあるため、病院で診断・検査を受けましょう。

2〜4週間以上、下痢が継続している場合

原因として考えられること

1. 大腸ガンや炎症性腸疾患
2. 腸結核
3. アメーバー下痢など

対処法

激しい下痢や長期的な下痢は、原因を確かめた上で治療が必要になります。また、脱水が進み、ショック症状や電解質異常を引き起こす場合もあります。
短期間でよくならない下痢は、病院を受診しましょう。

お腹の張りを伴う場合

原因として考えられること

1. 腸の動きに伴い、腹部が張っている場合
2. 胎児が成長し、子宮が大きくなるため、腸を圧迫している場合

対処法

一時的なものであれば、胎児への影響は少ないですが、念の為かかりつけ医を受診しましょう。

血便が出る場合

原因として考えられること

1. 肛門が切れている
2. 腸や胃の潰瘍
3. 大腸ガン

対処法

肛門近くが下痢の影響で切れてしまい、便に血液が混ざることもあります。
しかし、

1. 出血量が多い
2. 毎回血便が出る

といった場合には、腸や胃に潰瘍がある・大腸ガンといった可能性もありますので、一度病院を受診し検査が必要か確認しましょう。

お薬について

下痢を早く治したいときお手軽なのが市販のお薬。でも、妊娠中に市販薬を飲んでもいいのでしょうか？

市販薬について

妊娠後期に下痢になったとき、市販の痛み止めや下痢止め薬を服用してもいいですか？

妊娠中の市販薬の使用は、事前にかかりつけの産婦人科や医師に必ず相談・確認をしてください。

妊婦が飲める薬について

妊婦が飲んでもいいお薬はあるのでしょうか？

処方の抗菌薬では、ホスホマイジン・ペニシリン系抗菌薬・マクロライド系抗菌薬が妊婦に使用可能です。

妊娠中の下痢の予防対策

 基本の対策

下痢を防ぐために、日常生活で気をつけることがあれば教えてください！

体を冷やさないようにしましょう。

寒い時期に外出で体を冷やさない、暑い時期に冷房をかけても下半身は冷やさないように気をつけましょう。

食べ物・飲み物

食事は、以下の3点に注意しましょう。

病院を受診するときの注意

 まずは、妊娠している人は下痢の症状をかかりつけの産婦人科に電話で相談しましょう。

その上で、その産婦人科で診療を行うか、もしくは、内科を受診するか判断をしてもらえます。これは感染症が原因の場合、かかりつけの産婦人科を直接受診して、他の妊婦の方にうつす危険を避けるためです。

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参考
基礎からわかる　妊婦・授乳婦のくすりと服薬指導　山中 美智子（ナツメ社）