子宮外妊娠の痛みはいつから？どんな痛み？特徴や見分け方・受診の目安も

お腹が痛いのは子宮外妊娠？
下腹部に痛みがあって不安…。

「子宮外妊娠について」お医者さんに聞きました。

子宮外妊娠の症状や、病院受診の目安もご紹介します。

監修者

前田 裕斗 先生

経歴

2013年　　東京大学医学部医学科卒業
2013年　　川崎市立川崎病院勤務
2015年　　神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科

現在は、日本産婦人科学会認定の産婦人科専門医として活躍中。

情報があふれ、正しい情報の選択がますます困難になっている昨今、何を信じればいいか不安でたまらない人の助けに少しでもなるよう、情報発信しています。

子宮外妊娠とは

子宮外妊娠（正式名称：異所性妊娠）は、受精卵が子宮以外の場所に着床した妊娠のことです。

受精卵は卵管から子宮へ運ばれ、子宮内膜に着床しますが、子宮内膜ではなく別の場所で着床してしまうことが1～2％の確率で起こります。

特に、卵管に着床してしまうケースが多く、子宮外妊娠全体の95％以上を占めます。

卵管に着床してしまう以外では、頻度は少ないですが、

• 帝王切開の傷跡
• 子宮の入り口
• 子宮と卵管のつなぎ目

など、子宮内でも受精卵が発育できない場所に着床することもあります。

そのため、近年は子宮外妊娠ではなく異所性妊娠と呼ぶのが一般的です。

子宮外妊娠したときの母体の状態・症状

妊娠初期の症状は正常妊娠と変わりませんが、妊娠周数が進むにつれ

• 不正出血がある
• 下腹部痛がある
• お腹の張りを感じる

といった、正常妊娠とは違う症状が現れはじめます。

子宮外妊娠を起こすと、胎盤から必要な酸素や栄養を受け取れないため、お腹の赤ちゃんは十分に育つことができません。

また、子宮外妊娠した部分が傷つき、破裂してしまうことがあります。

受精卵が卵管に着床してしまった場合、卵管が破裂して大出血を起こし、妊婦さんが命を落とす危険もあります。

子宮外妊娠の痛みはいつからある？

子宮外妊娠による痛みは多くの場合、妊娠4～5週頃から現れることがあります。

ですが、子宮外妊娠だと分かり、診断されるのは妊娠5～6週頃が多いです。

子宮外妊娠かどうかは、

•  妊娠しているかどうか（尿検査・血液検査）
•  子宮内に胎のうが確認できるかどうか（エコー検査）
•  子宮内の適切な場所以外に胎のうや胎児が確認できるか

などを確認することで診断していきます。

1回の検査では診断がつかないことも多く、タイミングを空けて複数回の検査をおこない、子宮外妊娠かどうかを判断します。

痛みを感じる場所はどこ？

子宮外妊娠では、下腹部に痛みを感じることが多いです。

初期の段階では痛みを感じない人もいます。

子宮外妊娠の痛みの現れ方は

• 痛み止めで抑えられる痛み
• 生理痛のような痛み
• 冷や汗が出るほどのお腹の痛み
• 痛みではなくお腹が張ったよう感じ
• お腹ではなく腰に痛みを感じる

など、個人差があります。

子宮外妊娠の初期症状の特徴

子宮外妊娠の初期症状として、

• 腹痛や下腹部痛がある
• 不正出血
• 胸がドキドキする
• 冷や汗
• 失神

などがあります。

初期症状が全く現れない人もおり、

• 激しい腹痛
• お腹の中に多量に出血する
• 貧血症状（胸がドキドキする、冷や汗、失神など）

の症状が急に現れることもあります。

少しでも違和感をおぼえたり、体調がおかしいと感じたら病院を受診するようにしましょう。

正常妊娠との見分け方

症状のみで判断することは難しいですが、

• 下腹部の痛みが治まらない
• 痛みが強くなっている
• 歩くとお腹に響く

場合は、子宮外妊娠の可能性があります。

子宮外妊娠は産婦人科医でも診断が難しく、正常妊娠でもお腹の痛みや不正出血がみられることがあるため、一般の人が見分けるのが難しいです。

自己判断せず、必ず医療機関で診断してもらいましょう。

子宮外妊娠かも…病院受診の目安

• 生理予定日が過ぎてから不正出血がある
• 下腹部痛や腹痛がある

といった様子がある場合は子宮外妊娠の心配があります。

すぐに病院を受診しましょう。

受診するときには、

• 痛みのある場所
• 痛みの強さ
• 出血の色と量
• 痛みや出血がどれくらい続いているか
• 妊娠検査で陽性がでているかどうか
• 最終月経日

といった点を医師に伝えると、診察がスムーズです。

子宮外妊娠の治療方法

子宮外妊娠の治療は、

• 手術療法
• 薬物療法
• 待機療法

の3つで、基本的には手術療法が選択されます。

薬物療法は「症状が軽い」「血中のホルモンの量が少なく胎嚢も小さい」などの条件を全て満たす場合におこなわれます。

待機療法がおこなわれることは極めてまれです。

①　手術療法

着床部位を取り除く手術です。

• 着床部位が判明している
• お腹の中に出血が溜まっており止血が必要

な場合に手術療法がおこなわれます。

着床部位が卵管の場合、卵管を取り除く方法と、卵管を保存する方法がありますが、子宮外妊娠を起こした卵管は次回の妊娠でも子宮外妊娠を繰り返すリスクが高く、片方の卵管を切除しても自然妊娠は可能であることから、取り除く方法が一般的となっています。

②　薬物療法

薬物療法は、メトトレキサート（MTX）という薬を投与して、妊娠を中断させます。

受精卵の着床部位がわかり、体外から注入できる場合は直接薬を注入することもありますが、ほとんどの場合は点滴で投与します。

③　待機療法

待機療法は、症状が軽く着床部位が不明で、子宮外妊娠部分が流産しそうな場合やhCGが低下傾向にある時、慎重に経過観察しながら自然流産後、体内に吸収されて自然治癒するのを待つという、稀におこなわれる療法です。

ホルモン量を見ながら定期的に通院してもらい、症状や出血が落ち着き、ホルモン値が妊娠していない値まで下がることを確認します。

子宮外妊娠の治療後に妊娠しにくくなることはある？

子宮外妊娠の治療後に妊娠しにくくなるということはありません。

しかし、子宮外妊娠を経験した人は再び子宮外妊娠になるリスクが高くなります。

手術で卵管を取り除いた場合も、もう片方の卵管に問題なければ、正常な妊娠ができます。

ただ、子宮外妊娠の部位が卵管であった場合、片方の卵管も通りが悪いことがあります。

次回の妊娠に向けて準備をしたい方は、卵管の通りを調べる検査を受けてみるのもよいでしょう。

合わせて読みたい

妊娠初期の出血「妊娠6週頃の茶色い出血」は心配ないことも多いけど…子宮外妊娠・流産の可能性も

2021-02-18

妊娠6週目ころに「茶色い出血（おりもの）」が…！これは何？大丈夫なの？お医者さんに、出血の原因と対処方法を聞きました。

続きを読む

合わせて読みたい

妊娠初期に出血が続く…いつまである？原因は？無事に出産できる？

2023-01-27

妊娠初期に出血が何日も続く…。いつまで続くの？無事に出産できる？「妊娠初期の出血はいつまで続くのか」について、お医者さんに聞きまし...

続きを読む

この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。